「MiniTool Power Data Recovery」とは
「MiniTool Power Data Recovery」はMiniTool社が提供するデータ復元のソフトウェアです。 「MiniTool Power Data Recovery」ではHDD上の削除されたファイルや、フォーマットされたパーティションからデータを復元することができます。
「MiniTool Power Data Recovery」には、無料版と有料版があり、無料版では1GBまでのデータを復元できます。
今回、この記事では「MiniTool Power Data Recovery」の無料版を使用したデータ復元について記載します。
HDDについて
HDD(Hard Disk Drive)は、内部にある円盤(プラッタ)がアルミニウムやガラス等の硬い(ハード)素材で作られていることから「ハードディスクドライブ」と呼ばれます。
HDDでは、この「プラッタ」にデータを記録します。
HDDには、主にデスクトップPCなどに内蔵されている3.5インチと、ノートPCなどに内蔵されている2.5インチの2種類のサイズがあります。
接続規格にはSATA(シリアルATA)を使用しているものがあります。
なお、SATAが普及する以前はIDE(パラレルATA)という接続規格のHDDの主流でした。
その他、SSDの接続規格として、mSATAやM.2(NGFF)、NVMeのものなどがあります。
実際のHDDはこんな感じです。
写真は3.5インチのもので、ラベルを見ると電力の記載が2つ確認できます。(赤枠)
これは、モーター用が12V、データ用が5Vと電圧が別々になっているためです。
また、HDDにはSATAの接続ポート以外にもジャンパーピンと呼ばれるものがあります。
マザーボードにはプライマリ、セカンダリという2つIDEソケットがあり、それぞれケーブルが2本ずつ、計4台のHDDを接続できます。
起動時には、プライマリ、セカンダリの順にOSが格納されたHDDを探索します。
各IDEポートに接続されたHDDはマスター、スレーブの順に探索され、ジャンパーピンはHDDのマスター、スレーブを設定するものです。
HDDのデータ復旧の仕組み
HDDはフォーマットしてもデータは完全に削除されません。
フォーマットではプラッタに記録されたデータそのものを消去するのではなく、ファイルシステムの管理情報のリセットを行います。
フォーマットを行うことでOSはディスク上の全てのセクターを「空き」と認識します。
しかし、実際のデータはまだディスク上に存在しており、新しいデータが上書きされるまで残っています。
「MiniTool Power Data Recovery」のようなデータ復旧ツールは、フォーマット後のHDDでもプラッタ上に残ったデータを読み取ることでデータを復元することができます。
その為、HDDに記録されたデータを完全に消去する場合は専用のデータ消去ツールなど使用してディスク上の全てのセクタにゼロやランダムデータを書き込むことで、既存のデータを上書きし、復元できないようにする必要があります。
「MiniTool Power Data Recovery」を使用したデータ復元
データ復旧を行うHDDについて
今回は「MiniTool Power Data Recovery」で、HDDのデータを復元してみます。
対象とするHDDは、今回メルカリで販売されていて「フォーマット済み」と記載されているHDDを選定しました。
Western Digital Purple 1.0TB
商品の説明は以下の通りです。
妥協のない監視システム用ストレージ WD Purpleドライブは24時間365日稼動のビデオ監視録画の問題に対応するように作られています。
このドライブは監視システム用に構築されており、NVR環境内の過度な熱変動や機器の振動への耐久性を備えています。
通常のデスクトップ用ドライブは短時間の稼動向けに設計されているため、高解像度監視システムの厳しい24時間365日常時稼動の環境向けではありません。
WD Purpleドライブは、幅広いセキュリティシステムとの互換性が検証された、信頼性の高い、監視システム用ストレージです。
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「MiniTool Power Data Recovery」のインストール
「MiniTool Power Data Recovery」は以下のサイトよりダウンロードできます。
ダウンロードしたインストーラを実行し、案内に従ってインストールを行います。
インストールは数分で完了しました。
「MiniTool Power Data Recovery」によるデータ復元
「MiniTool Power Data Recovery」を起動します。
「デバイス」タブより、接続中のデバイスが確認できます。ここでは端末に接続してあり、OSが認識可能なディスク情報が読み込まれます。
※なお、今回HDD故障で使用できなくなったHDDもデータ復元を試みましたが、そもそもWindowsに接続しても認識できない為、データ復元はできませんでした。
今回データ復元を試みるHDDを選択し、「SCAN」を実行します。
スキャンが完了すると復元された情報が確認できます。
今回は多数のJPGファイルとSWFファイルが復元できました。
また、復元されたデータをファイルとして保存することも可能です。
データ復元ができないようにするには
冒頭の内容とも重複しますが、HDDはフォーマットしてもデータは削除されません。
その為専用ツールによるデータの消去が必要になります。
今回は対象のHDDを同じく「MiniTool Partition Wizard」を使用してデータ消去を行い、その後、再度「MiniTool Power Data Recovery」でデータ復元ができるか試してみます。
「MiniTool Partition Wizard」を起動し、対象のHDDを選択、「ディスク抹消」を押下します。
今回は「DoD 5220.22-M」によるデータ消去を行いました。
DoD 5220.22-Mの消去基準とは
HDDのデータ消去の際、データ消去の基準として「DoD 5220.22 M」があります。 「DoD 5220.22 M」は、NISPOM(National Industrial Security Program Operations Manual)とも呼ばれ、米国国防総省が策定した消去基準です。
「DoD 5220.22-M」では、HDDを「1と0」のバイナリパターンで上書きするプロセスが規定されています。
この消去規格では、データ領域を最初にゼロ(0x00)で上書きを1回した後、固定値(0xff)で1回上書きし、さらに0-255までの乱数で上書きを1回行い計3回の上書きを行う方式です。
なお、データ消去に関するガイドラインとして「NIST SP 800-88 Rev.1」が公開されています。
「MiniTool Power Data Recovery」による再スキャン
先程と同じ方法でデータ消去したHDDを「MiniTool Power Data Recovery」で再度スキャンを行います。
スキャンの結果、今度は復元可能なデータは検出されませんでした。
おわりに
今回はデータ復元ソフトを使用してフォーマット済みで販売されているHDDからデータの復旧を行いました。
結果として、適切なデータ消去が行われていないHDDからはデータを復元することが可能であることを確認しました。
HDDを廃棄する際は適切なデータ消去が必要だと思います。